ボケたじいちゃんが一度だけ記憶を取り戻した話

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昔ちょっとした不思議体験をしたのでその時の話をしていきたいと思う

僕のじいちゃんは2人いたが現在は2人とも亡くなってしまっている


父方のじいちゃんは90歳くらいまで長生きしたのだがもっと前に(70歳後半くらいかな?)脳梗塞で倒れたことがあった
それ以前は僕が初孫ということもあってかものすごく可愛がってくれて、じいちゃんは昔はドラえもんにでてくるカミナリさんみたいな怖いオヤジだったのが僕が誕生したことで『超優しいじいじ』に変わった

それくらい僕を溺愛してくれていた(孫パワーすごい


で、脳梗塞を発症してしまった時くらいから会話があまりうまくできなくなったり老化も後押しして耳が遠くなってきたりでだんだんと僕のことも分からなくなってきてしまっていた

じいちゃんは痴呆が入っていった

じいちゃんに1番近い人、つまり僕のばあちゃんのことはまだよく分かる

2番目に近い人(僕の父)も分かる、けどたまに違う名前で呼んだりもしていた

だが、僕に至っては3回に1回くらいしか認識してくれない。笑


まぁしょうがないよな、と思いつつも少しづつ僕の中でじいちゃんとの心の距離感みたいなものができていったのを感じていっていた

介護施設と病院を繰り返す日々

僕が20歳くらいになった時にはばあちゃんも体力的にしんどいという理由でじいちゃんは介護施設に預けられることになった


そりゃそうだ、ただでさえ体格の良かったじいちゃんだったんで、歳とってきたばあちゃんに在宅で介護する体力も無いわけである


介護施設に入ってからのじいちゃんは時々風邪をひいたり肺炎にかかったりして介護施設と病院での入院を繰り返すようになってきていた


僕はというと仕事が忙しかったりでじいちゃんが入院した時にたまーに病院に顔を出しに行くって感じだったんだけど、会うたびにじいちゃんは痩せ細っていって僕に会っても誰だかわかってない様子
『けんたろうだよー』って喋りかけてもじいちゃんは、誰だろう?って感じで険しい顔で僕を見つめるだけだった


こうなるとお見舞いには行くけど僕の好きだったじいちゃんがそこにいる感じは無くて
『じいちゃんの姿をした誰か』に会いにいっているような感覚だった

僕は結婚して25歳になっていた

月日はどんどん過ぎていって僕は25歳になり結婚していた

じいちゃんは米寿のお祝いをしてもうすぐで90歳を迎えようかというところだった

そんなある日嫁さんと一緒にじいちゃんのお見舞いに行ったんだ
相変わらずじいちゃんは力なくぼけーっとしていた


いつものように『じいちゃん、けんたろうだよー、来たよー』って声をかけた
じいちゃんはいつものように誰だろう?って顔をした

と思ったら、ものすごく驚いた顔をしてものすごく笑顔になった

僕は心臓が止まるくらいびっくりした
あれ?もしかしてじいちゃん俺のこと分かってる?
何度も『孫のけんたろうだよ、分かる?』と聞くとじいちゃんは笑顔で何度もうなずいた

こんなことってあるのか?今までずっとボケが入っていて僕のことのなんて全然思い出さなかったのに明らかにこの日は僕のことを認識していた

僕の目の前にいるのは昔僕を可愛がってくれていたじいちゃんがいた

結婚したことの報告やたわいもない話を僕は一方的にしゃべった
じいちゃんは言葉がでないのでウンウンとうなずくだけだったが僕はそれでも構わなかった

横を見たら嫁は号泣していた。笑

俺のじーちゃんやで(´ー`)

と思いつつ、じいちゃんにまた来るからねと伝えこの日は後にした

けっきょくこの日がじいちゃんと交わした最後の心の会話だった

その後も何度か病院に足を運んだがやっぱり険しい顔で誰だろう?っていう顔をされた

さいごに

今でもじいちゃんが記憶を取り戻したあの日のことを考えると不思議な体験をしたなーとしみじみ思う


ただあの日があったからこそ僕の中でじいちゃんは笑顔で微笑んでくれているし今でもいい思い出として残っている

そんな昔の不思議体験談でした

おわり!

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